【対談】暮らす人それぞれの、地域との関わり方。ローカルパートナーの青木さん・日向さん・樋口さんにインタビュー

東京相双化計画のゆうかです。
2026年9月より、東京相双化計画が始まるきっかけとなったふくしま未来創造アカデミーの5期がはじまっています!

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5期のテーマは「暮らし」と「仕事」の再編集。
そこで本メディアでは、運営メンバーの方々へ福島12市町村やアカデミーに対する想いをインタビューし、ご紹介していきたいと思います!

今回は、受講生の皆さんと現地フィールドワークを巡る「ローカルパートナー」の皆さんによる対談記事です。 今回お話を伺ったのは、福島12市町村で実際に暮らし、それぞれのスタイルで地域に関わっているこちらの3名です!

青木裕介さん|合同会社ちゃのまプロジェクト(広野町)

福島県広野町出身。東日本大震災を機に会津若松市で社会人向けの教育事業に携わるも、見落としがちなふるさと(広野町)の魅力を発掘しSNSなどで発信。2018年に帰還、世代間交流を目的としたITスクール「ピコラボ」と交流施設「多世代交流スペースぷらっとあっと」を開設。シビックプライドの醸成をテーマに地域イベントや学生支援を行う。

日向志帆さん|NPO法人インビジブル(富岡町)

2001年山形県生まれ。東北芸術工科大学コミュニティデザイン学科卒。大学在学中の2024年より福島県富岡町で暮らし始める。現在は、アートの制作プロセスや探究の過程を「人と人、人と地域をつなぐ媒介」と捉え、暮らしの中に問いや学びをひらく活動を展開中。社会教育士/富岡町地域学校協働活動推進員。

樋口裕一さん|株式会社図図倉庫(飯舘村)

屋台制作、古民家改装にデザインなど、横断的なメディアでものづくりを介して地域や個人の物語や想いをかたちにする活動をしたのち、現在は福島県飯舘村の図図倉庫のアートディレクターとして、商品の企画・開発や造形物製作やデザインに関わり、異なるもの同士が関わる難しさと面白さを日々味わっている

目次

まずは、皆さんについて

Q1. まずは、今どんな活動・お仕事をされているのか、簡単に教えてください。

樋口さん:僕は飯舘村にある「図図倉庫(ずっとそーこ)」で、環境についての対話の場づくりをメインとしながら、ものづくり担当としてデザインやリノベーションなど、何でも作る役割として関わっています。

図図倉庫を下北沢に出張しにいくためのミニトレーラーもDIYで自作しました

また個人のアーティストユニット「ムスヒラ」として、会津の料理人や小高の詩人と一緒に、僕が美術を担当する3人組でも活動しています。「浜通り食と藝術プロジェクト」では、富岡町の個人の記憶をインタビューやリサーチで掘り起こし、その記憶に基づいたお弁当や詩、空間を作って体験してもらう作品を制作しています。

日向さん:私は富岡町や浜通りで、NPO法人インビジブルという団体に所属して、アートプロジェクトの企画運営を行っています。今樋口さんからお話があった「浜通り食と藝術プロジェクト」では、今年度は樋口さんも加わるアートユニット「ムスヒラ」の皆さんとともに、食に関する個人の記憶をリサーチしているほか、町内に唯一ある小中学校にアーティストなどクリエイティブのプロが転校生として滞在するPinSプロジェクトなどに携わっています。個人としては、学生時代からとみおかこども食堂も地域の皆さんとご一緒しています。

PinSプロジェクト(2025年度転校生三原聡一郎さんの制作を手伝うこどもたち)提供:NPO法人インビジブル
PinSプロジェクト(2026年度転校生・川村亘平斎さんの作品とこどもたち)提供:NPO法人インビジブル
とみおかこども食堂

青木さん:私はパソコン教室の運営をしています。パソコンやスマホの困りごとをプライベートで個別サポートしていて、下は幼稚園生から上は80代後半まで生徒さんがいます。

一番下の幼稚園生や小学生低学年には、おもちゃを使って「今どこにいてどう進むか」を考えてロボットに命令を出し動かすプログラミングのワークショップを行っています。 そのほかの活動では、合同会社ちゃのまプロジェクトとして、広野駅から徒歩3分の倉庫を地域の方々とDIYし、「多世代交流スペース ぷらっとあっと」を開設しました。世代間交流が難しくなってきた現代で、茶の間に人が集まる「血のつながらない家族」がつくれたらいいなと思って活動しています。

ぷらっとあっと

Q2. 今の活動や、地域に関わるようになったきっかけは何だったのでしょうか?

青木さん:私は正直に言うと、東日本大震災の前までは地元の広野町に全く興味がありませんでした。職場もいわき市にあり、広野は「ただ家がある場所」という感覚だったんです。ですが、震災の避難先だった会津若松で出会った方々が強い郷土愛やシビックプライドを持っていて自信に満ち溢れている姿に触れたとき、自分の生まれ育った町について何も答えられない自分が恥ずかしくなりました。 そこで客観的に自分の町を見つめ直したときに、原風景が残っていて日常がゆっくり進んでいることや、海・山・川・星空といった自然に囲まれながら土日には都会へ買い物に行けるバランスの良さなど、広野にしかない魅力に気づきました。子供や地域の人に押し付けるのではなく、自分自身が暮らす楽しさを背中で見せていくことで、みんなに面白さに気づいてもらえたらと思って活動を始めました。

樋口さん:僕は大阪出身で、直接のきっかけは図図倉庫のメンバーの1人に誘われたことでした。ですが振り返ってみると、僕自身の性質とこの地域の状況が合っていたと感じています。ふくしま12市町村は課題が山積し人手不足な部分があり、1人で多様な役割を果たしたり、答えのない課題に取り組むことが求められます。僕自身、アーティストとして毎回違うテーマや人と関わったり、デザインや内装業、飲食店など色々なことをやってきた職歴があり、研究者・農家・企業・学生など様々な人が「環境」をテーマに集まる図図倉庫の場に自分の性質が自然とフィットしました。復興の手伝いというより、自分の歩んできた文脈や性質とはまった感覚が大きいです。

図図倉庫での映画上映会の様子

日向さん:私は山形出身なのですが、東北で生まれて電気を使って育ってきた身として、福島のことを知らないまま社会に出るのは嫌だなという思いが一番最初の感情でした。福島を調べる中で出会った親子をきっかけに富岡町や12市町村で暮らす子どもたちの日常を知りたくなったのですが、スキルやお金があったわけではないので「まずは住んでみよう」と大学4年生の時に富岡町へ引っ越しました。 就職時期に夜ノ森地区の避難指示解除で解体作業が増え、街が変わっていく様子を見る中で「今この町にいたい」と富岡で仕事を探すようになりました。とはいえ、自分に何ができるのだろうという迷いはずっとあって、「復興」という大きな言葉や分かりやすい文脈に接続するのではなく、一番分かりにくくも面白そうな「アート」を扱う現在の団体で働くことを決めました。

それぞれが見ている「地域」について

Q3. 暮らしているからこそ感じる、「意外と知られていないけど、ここが好き」「ここがおもしろい」と思うところはありますか?

樋口さん:飯舘村の山津見神社で続く例大祭とオオカミ信仰です。神社には100体以上の狼の天井絵や狛犬のような狼の像があり、狼にまつわるエピソードが多く残っています。相馬藩の馬を育てるために馬を襲う狼を絶滅させながらも、同時に「オオカミ信仰」が神の使いとして続いてきたという複雑な歴史があり、人間と自然の関係性を考える上でとても象徴的で面白い文化だと思います。

青木さん:広野町には、世界的に活躍するストリートアーティスト・ロームカウチさんのウォールアートが町内に3箇所あります。地元の人も知らない方が多いのですが、実は世界中を探しても広野町にしかない「恐竜」の作品があるんですよ。広野町でアート事業が始まってから関わりがあり、1〜2年に1回作品を制作していただいています。

日向さん:富岡町の山合いにある大きな「変電所」です。鉄の塊なのですが、電気が通る姿を想像すると生き物のように見えて好きなんです。その裏山には鉄鉱石があって、強力な磁石を持って歩くと黒い鉄鉱石がついてくるのも面白いですし、製鉄をしていた歴史を感じます。

変電所の裏山で石好き小学生と鉄鉱石釣り

また、これは広野町なのですが、火力発電所が夜に行くとそこだけ煌々と明るくて、SFの世界に行ったような気持ちになれるのも好きですね。

Q4. お互いの活動や地域との関わり方を見ていて、「この人のこういうところがおもしろいな」と感じることはありますか?

日向さん:青木さんはとにかくアクティブで、どこにでも現れますよね!青い服を着て探究活動やイベント、この前私たちがやったピクニックにも顔を出してくださって、「3人くらいいるんじゃないか」と思うほどです。(笑)

高校生や中学生、大学生が活動することに対して前向きに捉えて背中を押してくれる、頼もしいお兄さんみたいな存在だなと思っています。

青木さん:青い服は年間360日くらい着ています。(笑) 自分の町でも私のことを知らない人もいるのに、隣町に行ったらなおさらなので、「広野町から変なやつが毎回来てるな」と印象を残して広野を知ってもらうために意識して着ています。 

震災を経て浜通りでは広域的な生活や関わりがしやすくなりました。他の町を知ることで自分の町を客観的・俯瞰的に見る学びがたくさん得られるので、隣町にも積極的に足を運ぶようにしていますね。

樋口さんについての第一印象は、「ザ・アーティスト」でした!着ている服も地元の人っぽくなくて面白そうな方だなと思いましたし、図図倉庫にもぜひ行ってみたいです。 

日向さんとは3年ほど前にアーティスト関連の仕事で出会った際、「富岡町のアイドルです!」という感じで、ニコニコしていて。コミュ力お化けだなと思いました(笑)。自分の娘と同世代の若い視点から学びや気づきをもらっています。

樋口さん:お二人を見ていて自分との違いとして感じるのは、「日々を地域と共に暮らす姿勢」です。僕自身は記憶力が悪いことが原因でコミュニティの中で不特定多数の方々と広く関係性を積み重ねていくのが苦手で、特定の人やモノづくり・空間の開発に特化した関わり方をしています。 でも「正しい関わり方はこれしかない」ということはないと思うんです。僕たちの違いを通して「色んな関わり方・距離感があっていいんだ」と感じてもらい、自分自身に合った関わり方を試しながら飛び込んでみてもらえたらいいなと思います。

フィールドワークについて

Q5. これから5期生がフィールドワークで福島12市町村を訪れます。受講生のみなさんには、どんなものを見たり、感じてほしいですか?

青木さん:今ある景色や空気、出会う人の表情など、ありのままを素直に見て感じてほしいです。ただ同時に、変化のある町なので、更地になっている場所にも過去や歴史の背景があります。そんな過去も含めて感じながら、前を向く今を見つめてもらえたら嬉しいですね。

樋口さん:伝承館だけでなく、原発や放射線、農業、コミュニティなどに対して多様な視点に触れてほしいです。多様な視点や物差しに出会うことで自分のバイアスに気がつくことができると思います。多様な視点を通して、「自分はどう感じたか」という自分ごとに落とし込んでいってもらえればと思います。

日向さん:2泊3日という短期間で無理に答えを出そうと焦らなくて良いのかなと思います。景色としてなくなってしまった場所も人の記憶の中に眠っていて、地域住民が昔の街を語り出す瞬間に触れる体験はとても貴重です。

1日目の夜には富岡駅前で食の思い出を集めたプロジェクトの発表や交流の場もありますので、ぜひお酒を飲みながら生の出会いを楽しんでほしいですね。

Q6. 5期生へ向けて、一言ずつメッセージをお願いします!

日向さん:私自身も今回の講座を通して、この町での暮らし方と仕事のあり方を再編集したいと思っています。受講生の皆さんと一緒に学びながら、人生や地域との距離感を考えていきたいです!

樋口さん:ローカルパートナーは「講師」というより、受講生の皆さんと同じ目線で一緒に散策する伴走者です。立場は変わらないので、一緒に福島12市町村を散策しましょう!

青木さん:何が良い・悪いと頭で判断するのではなく、自分の心や直感で感じたことに素直になってもらいたいです。その感情を疑わずに全部丸ごと楽しんでいきましょう!

インタビュー後記

今回お話を伺って印象的だったのは、3人それぞれの「地域との関わり方」の違いでした。同じ福島12市町村で暮らし、活動していても、地域の人と日々の関係を積み重ねる人、ものづくりや表現を通して関わる人、町を越えて人と人をつなぐ人、その距離感や関わり方は、本当に人それぞれです。対談の中で樋口さんが話していた「色んな関わり方・距離感があっていい」という言葉は、まさに3人の姿そのものだと感じました。

そして、お互いの印象を聞いたときのやりとりも、対談ならではでした。笑いながら話す3人のやりとりから、普段の関係性や、それぞれの人柄が垣間見えたのも印象的でした!3人がローカルパートナーとして一緒に歩いてくれたフィールドワーク。5期生のみなさんにとってどんなものになり、どんなアウトプットが生まれるのか、次回の講座も楽しみです。

インタビューへのご協力、ありがとうございました!

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この記事を書いた人

Yukaのアバター Yuka Web・写真担当

ふくしま未来創造アカデミー1期生。
Webサイトの運用を担当しています。
宮城県仙台市出身。祖父母の住んでいる福島が好きで、アカデミーを通して東京相双化計画を考えました。
趣味の写真で、相双の魅力や活動の様子を楽しくお伝えします!

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